CX × DXで反転攻勢 アフターコロナのNew Normal 〈前編〉

特集

 中国武漢に端を発する新型コナウイルス感染症拡大から3カ月、日本においてもようやく緊急事態宣言が解除され、感染を予防する生活様式を取り入れた「New Normal(新しい社会)」で活動が再開されている。
 テレワーク、Web会議、クラウドによるリモート化、キャッシュレス化、EC(ネット通販)、在宅での医療・介護サービスや薬の宅配サービス、教育分野でも自宅学習用アプリなどが急速に普及し始めている。新型コロナウイルスによって、Society 5.0が加速したといえる。
 5月27日、改正国家戦略特区法が参院本会議で可決し、AIやビッグデータなど先端技術を活用した「スーパーシティ構想」が始動する。移動、物流、医療、教育などあらゆる分野の先端技術を組み合わせ、ビッグデータの解析やAIを活用して10年後の未来社会の生活を実現することになる。
 DX(Digital transformation)とは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(不易流行4・5月号特集)だった。DXの超加速は必至、テレワーク、Web会議ができるだけではすまされないと誰もが気づいている。
 アフターコロナのNew Normalに、次の一手を打つことができるかどうか。今号ではCXを取り上げる。CXは「Customer Experience」の略で「顧客が体験する価値」のことを意味する。


*New Normal
「新たな常態・常識」という意味。リーマンショックから回復しても以前の姿には戻れないという金融上の概念だったが、コロナショック後、「以前の姿には戻れない」という文脈で、頻繁に使われるようになった。

*Society 5.0
日本政府が提唱する未来社会のコンセプト。日本の持続的経済発展のための主軸政策に、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。

CXとは

 具体的に商品やサービスの物質的・金銭的な価値だけではなく、商品やサービスの購入前の販促・購入後のサポートなど、関連する顧客体験すべてをいう。
 CS(Customer Satisfaction:顧客満足、顧客満足度)を、マーケティング・営業・物流・Webの設計、コンテンツ、デザインまで含めた全体で実現する。顧客目線で、現在・過去・未来を通しての「おもてなし」=「顧客が体験する価値」と考えれば理解しやすいかもしれない。
 また、SNS・ブログなどで商品やサービスに関して、顧客自らが情報発信できるようになった。インターネットネイティブ・SNSネイティブと呼ばれる世代は、SNSを経由して目的のお店や商品、サービスに到達する。
 言い換えれば、顧客が商品やサービスを購入するということは、実際にはそれ以上の価値を企業にもたらすことになる。故に、「CXの向上が企業(商品)の差別化」を生み出す残された可能性なのである。観光産業の分野においても同様で、「顧客が体験する価値」の向上を実現しなければならない。

MaaSとCX

 MaaS(Mobility as a Service・通称:マース)は、「あらゆる人々の移動 / 輸送ニーズに応えるために、情報・予約・決済を統合した移動 / 輸送サービス」である。モビリティ(移動)を一つのサービス(a Service)として捉え、それを可能にする概念、或いは仕組みをMaaSという。そして、キーデバイスがスマートフォンだ。MaaSはあらゆる移動サービスと情報が一つのアプリに統合され、一括して予約と決済ができ、シームレスな移動を実現する。更にMaaSはヒトの移動に加え、モノの移動(物流)にも大きな変化を生み出す。医療・介護・育児施設や商業施設など、あらゆる産業との連携が可能であり、まちづくりや都市計画、そして観光産業において、訪れたい都市として選ばれるためにはCXの向上が最優先の課題となる。
 単に、ストレスなくシームレスな移動を可能にするだけが、MaaSではない。CX戦略として考えるならば、旅を思い立ち、現地を訪れ、旅を終え思い出として振り返るまで、全てが「顧客が体験する価値」なのである。
 もはや、他地域にはない独自のコンテンツだけでは、生き残ることは不可能かもしれない。2024年の世界遺産登録を目指すとともに、CX戦略による差別化に取り組む必要があるだろう。

 後編では具体的な事例を交えてCXとDXを組み合わせた事例などを紹介する